AIの進化で企業戦士は消え、ロゴデザイン相場は1,000円に…2035年、働き方はここまで変わる!

PEST分析、という言葉をご存知でしょうか?PESTとは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの頭文字を取ったもので、社会の大きな潮流からビジネスの分析を行うことです。

「働き方」を考えることが仕事であり、日本の総本山でもある厚生労働省は、社会の大きな変化をどうとらえ、今後の働き方がどのように変わっていくと考えているのか、「働き方の未来2035」から読み解いていきたいと思います。

働き方は「技術」が変える

社会的、経済的な側面では、人口減少、高齢化による成長経済の停滞、場合によっては減退も考えられます。その対策として、政治的には女性や外国人の職場参画、活躍推進をバックアップしています。しかし、働き方の変化と最も近い距離にいるのが「技術」です。政治や社会、経済の動きは、技術によって変わっていく働き方を推進するものであったり、結果であったりすると言えるでしょう。

AIは人間から仕事を奪うか

雑誌などで、「10年後に消える仕事、残る仕事」のような特集を見かけることが増えました。AI(人工知能)によって人間の仕事が機械に奪われていく、というものです。しかし、あれらの仮説はベースとする前提条件がかなり偏っていることが多く、鵜呑みにするわけにもいきません。

基本的な考え方として、パターン化できる業務、多少の誤りがあっても大丈夫な業務などは代替えされていくことが予測されます。現在でもすでに「チャットボット」のようなものが出現しており、ネット通販のカスタマー対応などはかなりAIが担っていくことになるでしょう。いわゆる窓口業務のようなものは、お金のやり取りが発生するレジなども含めて、10年後にはほとんど機械化されていくことになるでしょう。

一方で、個別性、専門性が高い判断を要する業務はAIで代替えは不可能、もしくはまだまだ時間がかかると言えます。医療画像をもとにしたガン検出後の判断などは、AIが大幅にバックアップすることになるものの、最終ジャッジは人間に委ねられる可能性が高いと言えます。

「ヒューマンタッチ」という業務内容

人間しかできない業務の中で「ヒューマンタッチ」と呼ばれる領域があります。人間は、人間にサービスを受けることで満足を得ることが多々あり、そういった箇所はAIやロボティクスが進出してきにくいと言えます。例えば、格安居酒屋では注文をリモコンによって行うことが多いですが、高級料亭やお寿司屋さんでは、やはり人間に対応してもらいたいものです。また、いくら自動化が可能だからと言って、結婚記念日で訪れた旅館ではやはり人間におもてなししてもらいたいと考えるのが人情というものでしょう。結論、サービス業における人間の割合というものは今後も増加していくと考えられています。

起業家、経営者という仕事

AIによってリサーチ、情報収集、その分析が大幅に効率化されるとどうなるでしょうか。ますます「正解が何か」が難しい世の中になり、人の判断が必要になってきます。AIが物事を判断するには「教師データ」という、「これが正解」という指針が必要になるのですが、経営や企画という業務では、何が正解かを事前に指し示すことが非常に難しいためです。

人間が「AIを使役する」という形により生産性が大幅に高まる

人間が「AIを使役する」という形により生産性が大幅に高まる

職人技はAI、ロボットが取って代わる!?

職人の技術こそ、AIやロボットでは代替えが不可能なのではないか?と思われがちですが、一概にそうとも言えません。なぜなら、職人の世界は今や後継者不足で、そもそも存続の危機に瀕しているケースが多いため、その分野をAIやロボットで救いたいと考えている技術者や企業が多数いるからです。難易度だけの問題ではなく、ニーズが高いため、そこに投下されるリソースが多く、解決に向けて一歩先をいっていると言えます。職人のほか、就労希望者の少ない過酷な業務、例えば介護事業なども2035年に向けてロボットの開発が急ピッチで進められている分野だと言えます。

「働く場所」がいよいよ関係なくなる

すでに実感している人が多いテーマではありますが、今後はますます働く場所にとらわれなくなります。工場や物流の現場など、人がいないといけないケースもまだ存在していますが、こういった仕事は現在進行形でロボットの介入が加速しています。今までは場所に、時間に拘束されることこそが「働く」の大前提だったが、今後はそういったことはなくなっていくでしょう。より一層成果で判断されることになりますが、時間や場所に拘束されない、ライフスタイルを優先した社会が実現していきそうです。

地方移住しつつ都市部の企業に参画、というケースも増えるだろう

地方移住しつつ都市部の企業に参画、というケースも増えるだろう

それによって、そもそも「働く意味」も変わってくるでしょう。厚生労働省は下記のように述べています。

2035 年には、「働く」という活動が、単にお金を得るためではなく、社会への 貢献や、周りの人との助け合いや地域との共生、自己の充実感など、多様な目 的をもって行動することも包摂する社会になっている。

正社員が消えるのはいつか?

働き方が大きく変われば、もちろん雇用の枠組みも変わっていくでしょう。現在有力な考え方としては、「プロジェクト単位で所属する」という企業への参加形態です。プロジェクトが興ればそこに人が集まり、プロジェクトの終了とともに解散する、ということになります。もちろんプロジェクトによっては長期的なものもあれば、終わりが不明確なものも存在します。

すでに、企業側が「正社員」を採用するメリットは、非常に小さくなっているのではないか?と私は感じています。一方で正社員は国、法律によって非常に厚く守られているため、企業側は雇用によって複雑なリスクを抱えることにもなります。その結果、すでに業務委託や契約社員を増やしている企業が多くなっているわけですが、その結果生まれる「正社員とのギャップ」を埋める必要が出てきているのが現在だ、と捉えられます。今後、正社員ばかりが厚遇される状況は減る一方でしょう。東京オリンピックが開催される2020年ころには、「そもそも正社員ってなんかメリットあるの?」という認識がかなり強くなっていると思われます。

複業(≠副業)はすぐ当たり前になる

2016年、サイボウズ社が「複業採用」をして話題になりました。今後、プロジェクト単位で人が集まったり解散したりするのであれば、複業は当然の考え方になっていくでしょう。複業は、企業としては固定で人材を抱える必要がなくなるというメリットがあります。小規模な会社では、例えば経理や総務、その他デザイナーなどを、1人丸々雇用するほどではないけど、定期的に依頼したい、というケースがよく見かけられます。
一方で労働者側は、複数の雇用先を持つことによって、不当な働き方や条件を押し付けられるリスクを減らすことができますし、雇用先が倒産したり解雇されたりといったことによって生活が崩れてしまうリスクを減らすこともできるようになります。

「企業戦士」の居場所がなくなる

企業は今まで、単に働く場所、給与だけでなく、「コミュニティ」も提供してきました。特に終身雇用の時代はその色が強かったのです。それが、複業の増加、終身雇用の終焉などによって、企業に「コミュニティ」を求めることが難しくなっています。地域のコミュニティ、SNSを通じたバーチャルなコミュニティ、趣味や思想などで繋がるコミュニティなど、何かしらの所属が必要になってくると考えられます。

業務の超価格破壊が始まる

技術の進歩によって、場所だけでなく、あらゆる「壁」が取り払われていきます。その時に日本にとって最もインパクトが大きいのが、言語の壁が取り払われることでしょう。

世界のフリーランスが日本の仕事を奪う日

クラウドソーシングをご存知ですか?日本ではランサーズ、海外ではUPWORKが有名です。クラウドソーシングとは、そのウェブサイトに登録された不特定多数の人たちに業務を依頼、完遂するプロセスのことを呼びます。今までは発注者と受注者の間にはプロダクションやディレクション事務所が介在していたものが、(ほぼ)直接取引が可能になり、単価が大幅に下がりました。業界の価格破壊をしたことで賛否両論あるようです。

日本では、「日本語」によって仕事が守られてきた側面があります。しかし、今後自動翻訳の精度が飛躍的に上がることにより、あらゆる国の業務は、世界の市場に飛び出すことになるでしょう。2016年、グーグルがニュートラル・ネットワークを導入したことによって、Google翻訳の精度が大きく向上したことが話題になりました。今後3~5年のうちには業務で使うのに問題のないレベルに行けば、日本人はごくごく普通に世界のクラウドソーシングの仕組みを使うようになっていくでしょう。

ネット上のコミュニケーションが加速すれば国籍、人種はますます無関係に

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ロゴデザインの相場はすでに1,000~5,000円

日本のクラウドソーシングでは、ロゴデザインは5万円前後のものが多くなっています。一方で、UPWORKでロゴデザインの案件を検索すると、10~50ドルくらい(1,000円~5,000円ちょっと)くらいのものが多くなっています。これは、英語のマーケットに、フィリピンやバングラデシュ、インドの人たちが相当数参入していることが要因だと考えられます。自動翻訳の精度が上がることで、彼らが日本市場に入ってくる、もしくは日本の事業者が英語のマーケットに発注するようになれば、日本国内の相場も段違いに下がっていくでしょう。

変化をチャンスと捉える人生設計

現在、20代、30代の人たちは、来る2035年に向けて、世の中の変化を素早くキャッチアップしていく必要があるでしょう。もう変化は変化で否応なく訪れてしまうものですから、その中でどのように自分の強みを創っていくのかを考えていくことが重要です。AIやロボットを使ってさらに生産性の高い仕事をする、言葉の壁がなくなったことをうまく使ってさらに大きい仕事をする、そういった姿勢が今後を勝ち抜くために求められるようになるでしょう。